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自動車部品のアルミ鋳物切削加工

2026.01.11

近年、自動車産業では環境負荷低減と燃費向上のため、軽量化が喫緊の課題となっています。この流れの中で、アルミ鋳物部品が果たす役割が急速に重要になってきています。

本稿では、自動車部品におけるアルミ鋳物部品の役割、需要が高まっている背景、そして精密な切削加工技術について鋳物切削加工のプロフェッショナルが解説します。

鋳物部品は、複雑な形状を一体成形できるため、自動車の主要な構造部や機能部品に広く採用されています。特に、アルミは鉄に比べて軽量であることから、近年需要が増加しています。

エンジン周辺部品


シリンダーブロック、シリンダーヘッド、オイルパンなど

駆動系部品


トランスミッションケース、ディファレンシャルケースなど

電気自動車 (EV) 関連部品


バッテリーハウジング、モーターケース、そして特に高い精度が求められるインバーターケースなど

アルミ鋳物部品の需要増加の背景には、主に以下の2つの大きな要因があります。

電動化に伴う徹底的な軽量化と熱管理の必要性


現在、自動車業界が直面している最大の課題は、ガソリン車から電気自動車(EV)への移行です。

EVは重いバッテリーを搭載するため、車両重量が大幅に増加する傾向にあり、これを相殺して航続距離を延ばすためには、他の部品を徹底的に軽量化しなければなりません。アルミは鉄と比較して比重が約3分の1と軽く、エンジンブロックやトランスミッションケースといった大型部品をアルミ鋳物に置き換えることで、劇的な重量削減が可能になります。

また、EV特有の課題として、モーターやパワーコントロールユニットから発生する熱を効率よく逃がす「熱管理」が挙げられます。アルミは熱伝導率が高いため、冷却性能が求められるバッテリーハウジングやヒートシンクといった部品においても、その特性が不可欠なものとなっています。

「ギガキャスト」に代表される大規模一体成形の普及


上記に加え、製造・加工技術の革新が、アルミ鋳物の需要をさらに伸ばしています。

近年、テスラをはじめとするメーカーが採用し注目を集めている「ギガキャスト」という手法がその象徴です。これは、従来であれば数十個、数百個の鋼板パーツを溶接して組み上げていた車体構造(リアアンダーボディなど)を、超大型のダイカストマシンを用いて巨大な一つのアルミ鋳物部品として成形する技術です。この手法により、部品点数が削減されるだけでなく、組み立て工程の簡素化や工場の省スペース化、さらには溶接箇所の減少による車体剛性の向上が実現します。

このように、コストダウンと高性能化を同時に達成する手段としてアルミ鋳物が選ばれており、新興の海外メーカーから国内の大手メーカーまで、この流れに追従する動きを加速させています。

アルミ鋳物の切削加工は、素材自体の軽量さや加工のしやすさという利点がある一方で、製品の高度化に伴い、非常に精密かつ繊細な技術が求められるようになっています。特に自動車部品においては、複雑な形状を維持しながら、厳しい寸法公差と美しい仕上げ面を両立させることが不可欠です。

高硬度なシリコン含有量に対応する刃先管理と高速加工


アルミ鋳物の多くは、強度や耐熱性を高めるためにシリコン(Si)が添加されていますが、このシリコン粒子は非常に硬く、工具を摩耗させる大きな要因となります。

そのため、加工現場ではダイヤモンド焼結体(PCD)を用いた工具の選定などが不可欠です。また、アルミニウムは融点が低く、加工熱によって切り粉が工具に溶着しやすいという特性を持っています。

これを防ぐためには、鋭利な刃先(シャープエッジ)を維持しつつ、高速回転・高送りで一気に削り出すことで熱を切り屑と共に逃がす「高速加工技術」が重要となります。適切な切削液の供給方法も含め、工具の寿命と加工能率をいかに最適化するかが技術の見せ所と言えます。

内部欠陥を考慮した薄肉形状の歪み抑制技術


近年のアルミ鋳物部品は、軽量化のために極限まで壁厚を薄く設計する「薄肉化」が進んでいます。

しかし、鋳物特有の課題として、内部にわずかな空洞(巣)が含まれることがあり、加工中にこの部分を起点として振動(びびり)が発生しやすくなります。薄肉のワークは剛性が低いため、クランプ(固定)の力が強すぎると加工後に歪みが生じ、弱すぎると加工精度が出ないというジレンマを抱えています。

これを解決するためには、ワークに過度な負荷をかけない治具の設計や、切削抵抗を分散させるツールパスのプログラミング技術が求められます。加工中の微細な振動を検知し、リアルタイムで回転数を制御するような高度なセンシング技術の導入も、不良率を低減するために不可欠な要素となっています。

当サイトを運営する株式会社友照工業が、多くの実績を持ち得意とするのが、□630サイズまでのアルミ鋳物・鋳鉄の高精度マシニング加工です。

自動車メーカー様・Tier1部品メーカー様をはじめとする設計・開発部門と連携した試作品・テストピースの製作に加え、補給品(サービスパーツ)の生産について豊富な実績があり、支給材の切削加工だけでなく、粗材調達から切削加工、圧入・組付けを含む「粗加一貫」の対応が可能です。

弊社の本社工場・第2工場では、三井精機の横型5軸マシニングセンタ3台をはじめとする、約40台のマシニングセンタを保有しており、月産数百個~数千個までの小中ロット量産にも対応可能です。 例えば、ブロックシリンダであれば月産300個、ATトランスミッションケースで月産3,000個、ラテラルロアアームのような比較的小物であれば月産18,000個の量産実績がございます。

さらに、「よいモノをつくるためには、よい道具(治工具・設備)を使わなければいけない」という考えのもと、とりわけ切削工具の選定にこだわっております。海外メーカーを含む複数の工具メーカーに依頼し、ハイエンドの特注ダイヤモンド工具を手配しております。

また、お客様から評価いただいているのが、温度・湿度が均一で空調ムラが発生しない20℃ ± 0.5℃の恒温恒湿工場です。これにより、穴ピッチの変化や加工条件の調整が必要なく、不良をほとんど無くすことができ、高精度な鋳物切削加工を実現できております。

弊社が過去に加工した製品をご紹介します(機密保持の関係上、製品画像はAIで生成しております)。

FC280-21 直列4気筒ブロックシリンダ


農業機械のエンジンを構成する直列4気筒ブロックシリンダです。

マシニング加工ののち、キャップ組付、サブアッシー後のマシニング加工を経て、内部の鋳巣をチェックをしたうえで納品いたしました。

FCA 直列6気筒ブロックシリンダ


粗材は、減衰能に優れたねずみ鋳鉄であるFCA材(片状黒鉛鋳鉄)を採用しています。

ブロック本体にラダーキャップを組み付けたのち、Φ58×620mmのクランク穴を同軸度20μmで加工しました。ボアボーリング+ホーニング加工によりΦ86×120mmの穴を真円度10μmの高精度で仕上げております。

ADC10 クラッチハウジング


粗材は、ADC12に比べSi量がやや少なく引張強度に優れるアルミダイカストADC10を採用しております。

サイズが大きく薄肉のワークですが、粗材の一部をくり抜き切除する必要があるため、加工圧による歪み発生を極力低減する工程設計を行いました。

AC4B-T6 ヘッドシリンダ


全長が長いためワーク取り付け時の誤差や機械加工誤差が、比較的出やすいワーク形状です。例えばワークを立てた姿勢で加工する場合、取り付け時に垂直でない場合にY軸が斜めに走ることになり穴位置ズレとなりやすくなります。

他方、ワークを寝かせた姿勢で加工する場合も、B軸反転精度誤差により長手方向両端の端面位置(厚み)が大きく変動することになります。

友照工業では、図面段階からの技術相談、試作、小中ロット加工まで幅広く対応しております。

鋳物の高精度切削加工なら、友照工業にお任せください。

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