鋳物の割れ・クラックの原因と対策
2025.12.16

鋳物について、鋳巣と並び多い鋳造欠陥の一つが、「割れ」です。割れを回避するためには、割れの種類や、どの鋳物材料が割れやすく割れにくいか、など鋳物全般に対する深い知見が求められます。
本稿では、鋳物が割れる原因とその対策について、鋳物切削加工のプロフェッショナルが解説します。
鋳物の割れの種類とそれぞれの原因・メカニズム
鋳物の割れとは、鋳造品が鋳造~熱処理~機械加工の一連の工程のどこかで、割れ又はクラックと呼ばれる亀裂・ひびが生じる鋳造欠陥の一つです。
鋳物が割れる現象は、製造工程のさまざまな段階で発生し、その種類とメカニズムは多岐にわたります。
凝固割れ(熱間割れ)
凝固割れは、溶けた金属が固まり始める際や、まだ高温で強度が低い状態のときに発生する割れです。鋳型や中子によって凝固中の収縮が拘束されることで、引張応力が生じ、金属が耐えきれずに裂けてしまいます。粒界割れ(後述)として現れることも多く、金属結晶の境界部分に沿って発生します。
引け割れ(常温割れ)
引け割れ(ひけ割れ)は、主に凝固後の冷却過程や常温になってから発生する割れです。鋳物内部の残留応力(特に形状が複雑な部分や肉厚の急激な変化がある部分)が、材料の強度を上回ることで生じます。収縮割れの一種とも言え、凝固・冷却による体積収縮が原因となります。
焼入れ割れ
焼入れ割れは、鋳物を急激に冷却する焼入れ処理の際に発生します。急冷によって、鋳物内部と外部の温度差や変態による体積変化の差が大きくなり、大きな熱応力や変態応力が生じて割れます。不均一な冷却が原因となることが多いです。
湯境による割れ
湯境とは、鋳型に注がれた溶湯が流れの終点で合流する際に、すでに冷え始めている部分と完全に溶け合わずにできる境界線のことです。この境界部分の強度が低くなるため、後工程の収縮応力などで割れが発生しやすくなります。ガス抜きが不十分な場合、発生しやすいとも言われます。
粒界割れ
粒界割れは、金属組織の粒界(結晶粒の境界)に沿って割れが進む現象の総称です。不純物の偏析や、凝固割れ、水素などのガスが原因で粒界の強度が低下することで発生し、上記のような様々な割れ現象の一因となります。
割れやすい/割れにくい鋳物材料
鋳物材料の割れやすさ/割れにくさは、材料によっても異なります。
鋳鉄
鋳鉄は、他の金属に比べて比較的割れにくい材料とされています。特にねずみ鋳鉄に含まれる片状の黒鉛が応力を分散させる作用を持つためです。ただし、ダクタイル鋳鉄(球状黒鉛鋳鉄)は、引張強度が高く粘りもあるため、ある程度の応力には耐えますが、複雑な形状や肉厚変化が大きい部分では、凝固収縮が大きいために割れるリスクが増します。
アルミ鋳物
アルミ鋳物は、一般的に割れやすい材料に分類されます。アルミニウム合金は、凝固収縮率が大きく、凝固温度範囲も比較的広いため、凝固割れ(熱間割れ)が発生しやすい性質を持っています。そのため、鋳型設計の際に、いかに収縮をスムーズに行わせるかが重要になります。
鋳物割れへの対策
鋳物の割れを防ぐためには、材料、形状、鋳造条件のすべてを最適化することが必要です。
形状変更
鋳物の割れの発生源となりやすい応力集中を避けるためには、製品の形状変更が有効です。角部に必ず大きな隅Rを設け、肉厚の急激な変化を避けて、全体が均一に冷えるように工夫します。強度補強のためにリブを設ける場合も、応力集中を招かない設計が求められます。また、離型時の抵抗を下げるため、抜き勾配を適切に設定します。
鋳造条件の調整
溶湯の注入温度を適切に管理することで、不必要な熱応力を防ぎます。凝固時間をコントロールするために、部分的に冷却速度を変える工夫(冷やし金など)も有効です。溶湯が十分に合流し、湯境ができにくいよう、湯道の設計を見直すことも重要です。
鋳型・中子の工夫
凝固・冷却による鋳物の収縮を阻害しないよう、鋳型や中子の型ばらし性(崩れやすさ)を高めます。これにより、鋳物にかかる拘束応力を低減します。鋳型内の空気やガスが原因の欠陥を防ぐため、ガス抜きを適切に行うことも必須です。
熱処理
焼入れを行う際は、温度管理と冷却速度を厳密に制御し、焼入れ割れを防ぐようにします。また、焼なましや応力除去焼なましといった熱処理を行うことで、鋳物内部の残留応力を緩和し、引け割れなどの発生リスクを低減させます。
弊社における鋳物の高精度切削加工
当サイトを運営する株式会社友照工業が、多くの実績を持ち得意とするのが、□630サイズまでのアルミ鋳物・鋳鉄の高精度マシニング加工です。
自動車メーカー様・Tier1部品メーカー様をはじめとする設計・開発部門と連携した試作品・テストピースの製作に加え、補給品(サービスパーツ)の生産について豊富な実績があり、支給材の切削加工だけでなく、粗材調達から切削加工、圧入・組付けを含む「粗加一貫」の対応が可能です。

弊社の本社工場・第2工場では、三井精機の横型5軸マシニングセンタ3台をはじめとする、約40台のマシニングセンタを保有しており、月産数百個~数千個までの小中ロット量産にも対応可能です。 例えば、ブロックシリンダであれば月産300個、ATトランスミッションケースで月産3,000個、ラテラルロアアームのような比較的小物であれば月産18,000個の量産実績がございます。
さらに、「よいモノをつくるためには、よい道具(治工具・設備)を使わなければいけない」という考えのもと、とりわけ切削工具の選定にこだわっております。海外メーカーを含む複数の工具メーカーに依頼し、ハイエンドの特注ダイヤモンド工具を手配しております。
また、お客様から評価いただいているのが、温度・湿度が均一で空調ムラが発生しない20℃ ± 0.5℃の恒温恒湿工場です。これにより、穴ピッチの変化や加工条件の調整が必要なく、不良をほとんど無くすことができ、高精度な鋳物切削加工を実現できております。
鋳物切削加工の事例
弊社が過去に加工した製品をご紹介します(機密保持の関係上、製品画像はAIで生成しております)。

FC280-21 直列4気筒ブロックシリンダ
農業機械のエンジンを構成する直列4気筒ブロックシリンダです。
マシニング加工ののち、キャップ組付、サブアッシー後のマシニング加工を経て、内部の鋳巣をチェックをしたうえで納品いたしました。

FCA 直列6気筒ブロックシリンダ
粗材は、減衰能に優れたねずみ鋳鉄であるFCA材(片状黒鉛鋳鉄)を採用しています。
ブロック本体にラダーキャップを組み付けたのち、Φ58×620mmのクランク穴を同軸度20μmで加工しました。ボアボーリング+ホーニング加工によりΦ86×120mmの穴を真円度10μmの高精度で仕上げております。

ADC10 クラッチハウジング
粗材は、ADC12に比べSi量がやや少なく引張強度に優れるアルミダイカストADC10を採用しております。
サイズが大きく薄肉のワークですが、粗材の一部をくり抜き切除する必要があるため、加工圧による歪み発生を極力低減する工程設計を行いました。

AC4B-T6 ヘッドシリンダ
全長が長いためワーク取り付け時の誤差や機械加工誤差が、比較的出やすいワーク形状です。例えばワークを立てた姿勢で加工する場合、取り付け時に垂直でない場合にY軸が斜めに走ることになり穴位置ズレとなりやすくなります。
他方、ワークを寝かせた姿勢で加工する場合も、B軸反転精度誤差により長手方向両端の端面位置(厚み)が大きく変動することになります。
鋳物切削加工なら、友照工業にお任せください
友照工業では、図面段階からの技術相談、試作、小中ロット加工まで幅広く対応しております。
鋳物の高精度切削加工なら、友照工業にお任せください。
運営元:株式会社 友照工業